で学ぶディジタル信号処理の基礎.pdfVIP

で学ぶディジタル信号処理の基礎 第 回 フィルタの設計 川又 政征 はじめに 今回は， と の双方に共通するフィルタ設計 において必要な事項を説明し，次に フィルタの 前回の講座では，単位インパルス応答や差分方程式， 代表的な設計法として窓関数法と最適設計法をとりあ あるいは伝達関数によって記述されているディジタル げ， による設計例を示す。 フィルタの応答や特性を解析した。前回とは逆に今回 および次回の講座では，望ましい応答や特性をもつ フィルタの設計問題 ディジタルフィルタの単位インパルス応答や差分方程 式，伝達関数を求めることを考える。このような手続 フィルタの設計仕様 きはフィルタの設計とよばれる。 ディジタルフィルタの利用分野は非常に広く，また ディジタルフィルタを設計するためには，望ましい 利用目的も様々である。このため，利用分野と目的に 応答や特性をまず与えなければならない。ディジタル あわせて数多くの設計法があり，それぞれ長所と短所 フィルタを設計するために与える応答や特性を設計仕 をもつ。ディジタルフィルタの設計のために 様あるいはフィルタ仕様という。与えられた設計仕様 には数多くの設計法が関数として準備されている。こ を満足するディジタルフィルタを設計する際には，設 の関数を利用するために，そのパラメータの意味を理 計仕様を満足する範囲の中でできるだけ低い次数の 解することは当然必要であるが，ディジタルフィルタ ディジタルフィルタ??設計しなければならない。なぜ による適切な信号処理のためには，利用する設計法の ならば，信号処理を行うためのハードウェア量や計算 原理を理解し，その長所と短所を知ることが重要であ 量の削減の必要性，および入出力間の不要な遅延の低 ることに注意してほしい。 減の必要性があるからである。 今回の講座でとりあげる設計問題は，周波数領域で 設計仕様の与え方には，周波数領域仕様と時間領域 与えられた設計仕様を満足する フィルタの単位 仕様がある。周波数領域仕様では，望ましい振幅特性 インパルス応答，あるいはこれと等価であるが，伝達 あるいは位相特性を与える。時間領域仕様では，望ま 関数を見出すことである。因果的な フィルタは しい単位インパルス応答や単位ステップ応答を与える。 線形位相特性を実現することができるという優れた特 ここでは，周波数選択性フィルタ に限定し，周波領 徴をもつため， フィルタの設計の場合に線形位相 域仕様の与え方について述べる。 特性が