家庭における性教育に関する一考察.pdfVIP

愛知教育大学教科教育センター研究報告 第20号, pp. 65~69 (March, 1996) 家庭における性教育に関する一考察 一小?中学生の性の受容と家族とのかかわり 天 野 敦 子(養護教育教室) 伊 東 純 子(三好町立三好中学校) ,大 石 昌 男(三好町立三好中学校) 大 河 内 治(三好町立中部小学校) A Study on Sexuality Education Activities The Identification of Male and Female of Children, and Their Parents Participation Atsuko AMANO (Department of Yogo Sciense) Junko ITO (Miyoshi JuniorHigh School) Masao OISI (Miyoshi JuniorHigh School) Osamu OKOCHI (Miyoshi Chubu Elementary School) はじめに 現在の学校における性教育を概観すると,科学的な 知識と同時に人間的感動を呼び起こし,生き方を学ば せるものでなければならないと言う共通認識が徐々に 浸透しつつあるように思われる。それとともに,性教 育は個人差が大きいので家庭において両親から子ども の年齢に応じたこまやかな指導がなされることも求め られだしている。このことは,ブラゼルトン1)が親子 の情熱的な「相互作用」に子育てのエッセンスがある と指摘していることや,小此木2)が,親子がお互いに 相手をどう思っているかは,親子関係を考えるうえで 非常に重要な意味をもっていると述べていることとも 通じるものである。また斉藤3)は,親から愛されない 子どもは,自信がなく,その自信のなさが無力感にむ すびついたり,攻撃的行動となってあらわれたりする と述べているが,親の愛や親子の絆の強さは,子ども が自立していくために重要な役割を果たすと考えられ る。 親子の関係は,いのちを得た時点から生まれ,意思 を交わしあう相互関係は,子どもがこの世に誕生した 日から始まる。それは子どもにとっても自分の人生の 出発点として意義深い事である。社会情勢の変化に伴 い離婚が容易になるにつれて,母子家庭や父子家庭の 子どもたちが増加している現在,伝統的な家族関係を 中心とした性教育のみではすまされない状況がでてき ている。しかし,現実から逃げるのではなく,このよ うな時にこそ,この世にいのちを得た時点の情報を大 事にして教育の中で生かしていくことが大切となろう。 そこで,私たちは子どもたちの誕生に焦点をあて,家 族の情報がどのように作用しているか研究することに した。 ここでは児童?生徒および保護者に対して三好町の 学校保健部会が行った性に関する意識調査をもとに, 自分の誕生に関する家族からの情報の有無が,児童? 生徒における「性認識」や「精通?初経の受けとめ方」 にどのように関連しているかを検討したので報告する。 2 研究対象と方法 (1)調査時期 1991年7月1日~7月14日 (2)調査対象 対象は表1に示すように,愛知県三好町の小学校 6校と中学校3校,計9校の児童?生徒,及び保護 者である。 (3)調査方法 担任教師を通じて質問紙によるアンケート調査を 実施した。回収した調査用紙は,マークシートに転 記した後,愛知県教育センターにデータ処理を依頼 した。 (4)調査内容 児童?生徒……家庭概況,自分の性認識,男性像と 女性像,異性とのかかわり,精通?初経,性指 導の実際,家庭での性教育,性に関する不安や 悩み,性について知りたいこと等 保 護 者……家族構成,しつけ,家事,性に関す る質問,家庭で指導すべき内容?学校で指導す べき内容等 本稿では上記の調査項目のうち①自分の誕生に関 する家族からの情報,②自分の性の受けとめ方,③ -65- 天野,伊東,大石,大河:家庭における性教育に関する一考察 精通?初経を迎えた時の気持ち,④家庭での性に関 する質問について検討した。 (5)統計処理にはカイ自乗検定を用いた。 3 無の別なく瞳孔を拡大させた。このことは男性に比較 して女性は結婚前から母親的な準備ができているから だと述べている。本研究の結果で女子に情報を得てい る者が多かったのは,子どもの時でも赤ん坊の誕生に ついて女子は関心が強いためではないかと思われる。 また,中学生に「聞いた」と回答した者が減少してい たのは,学習量の増加や興味関心の変化などにより記 憶が薄れたり,思春期特有の心理的要因が影響し意識 して回答を避けたりしていることも考えられるが,今 回の調査ではその理由を明らかにできなか