小型乳剤散布装置付きアスファルトフィニッシャの開発と施工事例.pdfVIP

48 建設の施工企画　’11. 8 特集＞＞＞　舗装 小型乳剤散布装置付きアスファルトフィニッシャの 開発と施工事例 黒　坂　正　昭?中　村　啓　介 施工の合理化，安全性の向上，周辺環境の保全といった目的で開発された「乳剤散布装置付きアスファ ルトフィニッシャ」がある。本稿では狭隘な市町村道へ適用するために機械の小型化を図り，更に乳剤の 少量散布対応及び新加熱機構を搭載した「小型乳剤散布装置付きアスファルトフィニッシャ」を開発した ので，実施工例を含めて紹介する。 キーワード：道路，舗装，舗装機械，乳剤散布装置，アスファルトフィニッシャ，表面処理 1．はじめに トを縮減する手法が導入されている。予防的維持修繕 工法として加熱混合物による表面処理工法が適用さ 一般のアスファルト舗装ではアスファルトデストリ れ，乳剤散布装置付きAFが使用されている。しかし， ビュータがこれから舗装する路面にアスファルト乳剤 従来機は大型のため狭隘な道路への適用は困難であっ （以下乳剤）を散布し，水分が無くなるまで養生した た。このため，解決策として機械の小型化が求められ 後，アスファルトフィニッシャでアスファルト混合物 てきた。 （以下合材）を敷きならす（図─ 1）。これに対して乳 今般，機械の小型化を図るとともに，従前以上の乳 剤散布装置付きアスファルトフィニッシャ（以下散布 剤少量散布および新加熱機構を搭載した「小型乳剤散 装置付きAF）を使用した新工法では合材を敷きなら 布装置付きアスファルトフィニッシャ」を開発したの す直前に乳剤を散布して舗装を行っていく（図─ 1）。 で，実施工例を含めて紹介する。 そのため以下のようなメリットがある。 ?施工効率の向上－乳剤の養生時間短縮による施工量 2．加熱混合物による表面処理工法の概要 増大 ?舗装の接着精度の向上と見映えの良さ－ダンプト 加熱混合物による表面処理工法は，図─2 に示す ラックのタイヤに乳剤の付着が無いため，タック ように，適度な空隙を有する最大粒径5mmの加熱合 コート面を保護し，かつ現場外の路面を汚すことが ない。 ?安全性の確保－デストリビュータの後退作業が無い 近年，道路の維持管理においてライフサイクルコス 図─1　舗装施工概念図 図─2　工法の概要図 建設の施工企画　’11. 8 49 材を，舗装平均厚が15mm程度となるよう散布装置 ことにより当初の開発コンセプトを達成することが出 付きAFで敷きならし，ローラで締め固めて仕上げる 来た。以下にその特徴的な装置について詳しく述べる。 ものである。この工法は，表面処理工法のうち舗装施 開発機の外観を写真─ 1 に大型機と比較した主要諸 工便覧1）でいうカーペットコートの施工性?耐久性 元を表─2 に示す。 を高めた工法と位置付けられる。 3．開発の背景 我が国において散布装置付きAFは当初，薄層排水 性舗装に適用されていたが，前出のメリットから通常 の排水性舗装にも適用されるようになり広く普及し た。排水性舗装は，その多くが幹線道路であることか ら散布装置付きAFには相応の能力と大きさが必要で あった。また，遮水型排水性舗装への適用のため，散 布装置付きAFはさらに大型化した。 一方で，表面処理工法は大型車交通量が比較的少な 写真─1　開発機外観 く構造的損傷が少ない場所で，舗装の延命化を図りた